私たちの身近にあるけど見えないし普段は意識しないものってありますよね。
経済です。本書はそんな経済を父が娘におとぎ話をするかのように聞かせる口調で進んでいきます。
著者はヤニス・バルファキスさんで2015年ギリシャが債務危機に陥った時に財務大臣に就任した方です。
大幅な債務帳消しを訴え注目を浴びました。
本書は全8章から構成されていますが1万年以上前の話から現代のビットコインまで記されており、さながら歴史小説のようです。
堅苦しい用語は出てこず現代がこれほどまでに豊かになった過程が分かりやすく書かれています。
- 第1章 なぜ、こんなに「格差」があるのか?
- 第2章 市場社会の誕生
- 第3章 「利益」と「借金」のウエディングマーチ
- 第4章 「金融」の黒魔術
- 第5章 世にも奇妙な「労働力」と「マネー」の話
- 第6章 恐るべき「機械」の呪い
- 第7章 誰にも管理されない「新しいお金」
- 第8章 人は地球の「ウイルス」か
25か国で刊行され世界的ベストセラーとなっております。
全ては余剰から始まった
現代の我々の社会基盤となるもの、例えば文字、債務、通貨、国家、官僚制、軍隊、宗教、テクノロジー。
これらは全て農作物の余剰から生まれたました。
魚や作物が豊かな肥沃な土地では人々は自然の恵みを享受するだけで生活できていた。
しかし、貧しい土地では農耕をしなければ人間が食べていけるだけの食糧を確保できません。
農耕は刈り取られた一部(=余剰)を翌年のために置いておき、それらを植え、耕しまた実りを享受するサイクルです。
この余剰を管理する上で文字や債務、通貨、さらに大きな力で管理するために国家、それらを統制する官僚制や軍隊と発展してきた。
確かに知識レベルでは貝殻がお金の役割を果たしていたことや債権債務の概念などはご存じだと思います。
けれど、それらがどういった経緯でこの世に生まれたかまで考えたことのある人は少ないのではないでしょうか。
これらのシステムは豊かさを目指すために発展し、資本主義という考え方が生まれ現代の社会を形作っています。
どうして日本は不景気から抜け出せないのか
日本にお住まいのあなたは不景気から抜け出せない日本の停滞感や閉塞感はよくお分かりだと思います。
第5章に冷蔵庫メーカーの経営者マリアの話として書かれていました。
企業の大きな負担となっているものに人件費があります。
景気が良い局面では売上・利益が増え人を雇える。だが、現代は景気が悪くなったときに雇用調整ができるよう非正規雇用の方がバッファをになっています。
こうすれば社会で働ける人が増えるが一転、賃金を安く抑えられる人が生まれ、購買力が落ち、企業は生産を落としさらに売上・利益が下がる。
そうして企業が投資を渋るようになり中央銀行が利下げを発表する。
そうすると景気悪化が継続すると想像されさらに不景気になる。
その結果、賃金や金利が上がらず予想は現実のものになり不景気がより現実のものになります。
どこかで聞いたことのある話ですね。


日本が貧しくなっている証拠だね
外国に投資したほうがいいことがよくわかるね
話が脱線しました。
人は不満足があるから幸福を感じられる
つまるところ、満足と不満の両方がなければ、本物の幸福を得ることはできない。満足によって奴隷になるよりも、われわれには不満になる自由が必要なのだ。
父が娘に語る経済の話 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい話 エピローグより
人は全てを一度に得られないので自分の欲しいものが何か自問し葛藤することで成長する。
それは世界も経済も不完全だからなせることです。
そしてそんな不完全な経済を経済学者のみに任せるのは最悪のやり方と著者は主張します。
大人になってから精神を解放し続けるには自立した考えを持つことがかかせないのです。
それらが精神の自由の源泉につながります。
「父が娘に語る経済の話 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい話」を読んだ感想
また一つ賢くなってしまった。小学生のような感想ですが。
十代半ばの娘さんに語る切り口で書かれていますので3歩歩くと数秒前のことを忘れてしまうと名高いツナ缶でも内容がよく分かりました。※ツナ缶は1993年生まれの酉年です。
タイトルでハードルを上げまくっているだけあります。
パスカルは「人は考える葦である」と述べましたが考えるためには今、何が起きていてどんな状況なのかどうしてこうなったのかを知る必要があります。
まず世界を知るためにおすすめの一冊です。1万年前から現代そしてすこし先の未来まで夢中になって読むことができます。
経済学者というとメガネでひょろっとしたイメージがありますがヤニス・バルファキス氏はスキンヘッドでいかつくおおよそ経済学者のステレオタイプから離れた風貌で驚きました。

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